不動産の真の価値と価格

不動産の「価格」についての論点は、かなり深くて広い。わずか数ページのブログで簡単に書ききれるものではないが、まず始めに知っておいて頂きたいポイントを、筆者なりに整理をしていく

不動産の「価格」とは何なのだろうか。その性質はどのようなものなのだろうか。

既に記事にした「不動産業界」という言葉と同様に、「価格」という言葉も、使う人によって、その意味が異なることは多い。例えば、(その不動産に係る)「ある時点で現実に成約され、売買の取引の際に受け渡しされた金銭の額」であることもあるし、「(仲介業者の担当者が考える)妥当な価格」であることもあるし、「(オーナーにとっての)目標売却価格」であることもあるし、「(購入希望者にとっての最低目線である)指値価格」を意味していたりもする。プロフェッショナルであっても、そうでなくとも、文脈によって「価格」という言葉の意味を異なって使うことが多いのであるから、「価格」という言葉を使うときにはその人がどのような意味で使っているかに十分注意を払う必要がある。

また、不動産の真の価値は、タイミングによって常に変動する(例えば、今と10年後の価格は異なる)。また、同じ不動産であっても、取引する人(主体)によって、その不動産に認める価値は異なるので、売買価格も変わる(例えば、眺望を重視する人は、多少高額であっても眺望の良い区画の住居を購入しようとする)。さらに言えば、同じ不動産、同じ人であっても、そのときの取引の事情によってその価格は変わる(例えば、急にお金が必要になった不動産オーナーは、売却価格を引き下げてでも不動産を売却する)。以上のように、いくつかケースを想定しただけでも、不動産の価格が一意に定まらないことがお分かり頂けたと思う。

ある不動産が現実に売買されたときの成約価格は、当然であるが、一つしかない。つまり、「幅」の概念がなく、一意に定まる。しかし、既に述べたように不動産の「妥当な価格」は、人や事情によって変わることから、「幅」の概念で捉えるべきだと筆者は考える。不動産の価格は、ときに人生を狂わすほど大きいのだが、債券におけるブラックショールズモデルのような確立した価格理論がないらこそ(不動産鑑定評価基準に基づく価格は、あくまで不動産鑑定士による対象不動産に係る価格に対する「意見」であって、オプション価格理論のような数理モデルとは別物であると筆者は整理している)、その価値は、人や場合によって変化し、万人にとって妥当でかつ適正な価格は存在しない。敢えて「妥当な価格」を説明しようとするなら、幅を持った概念とした方が実態に即していると筆者は考える。しかも、その幅は一様ではなく、中心から離れるほど出現頻度は少なくなると考えるべきであろう。私のイメージに最も近い出現確率のグラフは正規分布だ。

少し具体に、かつ、数学的に言い換えるとすると、「ある不動産の価格を正規分布グラフとしたときの中央値(その不動産の「真の価値」とこのブログでは定義する)よりも2σ安く買える(成約できる)確率は約5%である」と思う必要があると筆者は考える。

日々の実務の中で「この不動産のこの価格は妥当なのか?」と上司や同僚や若手から、筆者自身が質問を受けることがあるが、この質問はナンセンスであると私は思うし、唯一無二の正解も無いと思う。不動産を購入する人や不動産投資にチャレンジしようとしている方におかれては、ぜひ、不動産の「価格」を上記のように捉えて頂きたいと筆者は思っている。そうすれば、失敗する確率は減らすことができるはずだ。

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