不動産売買の関係者

不動産売買は、売主と買主だけで完了するものではない。様々な関係者や専門家がそれぞれの持ち場で仕事を果たしてくれてこそ、良い売買取引ができる。ここでは不動産売買取引に登場する関係者と「両手」にまつわる解説やその特徴を整理する。

まずは、不動産売買で登場する関係者を以下に図示する。

住宅(レジデンシャル)用途の不動産にフォーカスをして、関係者の特徴を解説する。

(1)売主
売買する土地や建物の良いところや悪いところ一番知っている。物件を売却することで、物件代金を受け取る。
(2)買主
物件が気に入ったら、物件代金(ローンを含む)を用意して、所有権の対価となる物件の代金を売主に支払う。代わりに、物件の所有権を取得する。
(3)売側仲介会社
売主が自宅を売りたいと思うと、まず仲介会社を選んで媒介契約(仲介)を締結する。仲介手数料は原則として物件価格の3%+6万円であるが、通常は成功報酬支払い。但し、媒介契約が解約されることはほとんどない一方、売却が完了すれば必ず上記仲介手数料を受け取ることができる。売側仲介会社の主な業務は、物件の宣伝広告や現地案内、重要事項説明。
(4)買側仲介会社
買主のために、買主の希望に沿った物件を見つけ出して、取引を完了させるのが買側仲介会社の役目。買主が物件を購入したら、物件価格の3%+6万円の仲介手数料を仲介業務の対価として受け取る。但し、支払条件は仲介会社によってさまざま(例えば、契約締結時に50%を受け取り、物件引渡し時に残りの50%を受け取るなど)。物件の宣伝広告や現地案内、重要事項説明が主な業務。買側仲介を売側仲介が兼ねる場合があることに注意(この場合のメリットとデメリットは以下に記載)。
(5)建物調査会社(ホームインスペクター)
建物の基本構造体に異常がないかを確認し、報告書を作成する専門家。戸建の場合は、調査を依頼することが最近は増えたがまだまだ一般的ではない。
(6)司法書士
当事者の意思通りに、所有権の移転や抵当権の設定が行われるように、取引に立会い、登記手続きを行う専門家。
(7)銀行等(金融機関)
買主が住宅を購入する際に、購入資金の大部分を融通する。借入人(買主)が最後までローンを返済できるかを審査するが、形式的な内容であるため、ローンが通過したからと言って、将来の返済が確実であると言えるわけではない点に留意する必要がある。

上記関係者の利益(気にするところ)がどこにあって、どのような行動特性があるのかを知っておくことは、これから自宅を購入しようとする人や不動産投資家にとって極めて重要だ。それらについて以下に解説する。

(1)売主
物件を少しでも高く売りたいと思っている。物件の問題点(瑕疵)を買主候補に敢えて言いたがらない傾向がある。
(2) 買主
建物や土地に欠陥(瑕疵)がないかについて最も注目している関係者。瑕疵を買主が知っていたか知らなかったかが後日争点になることが多いので、論点の明確化のためにも、買主は重要事項説明書のチェックを怠らないようにしなくてはならない。物件を少しでも安く買いたいと思っている。
(3)(4)仲介業者
早く売買を成立させて、早く仲介手数料を受領したいと考える傾向がある。上記したとおり、買側仲介を売側仲介が兼ねる場合があることに注意する必要がある。仲介業者が売りと買いを兼ねる場合、仲介業者は売主と買主の両方から3%+6万円をそれぞれ受け取ることができる(合計6%+12万円。これを「両手」という(両仲介手数料の略))。売側仲介が買側仲介を兼ねるメリットとデメリットは以下の通り。
【メリット】
・意思疎通のスピードが速い。
・関係者が減る分、ミスコミュニケーションが少なくなる。
・自分以外の仲介業者が買側に入っている場合よりも両手仲介の方が、価格交渉をするチャンスが大きい(買い側仲介が入ってくるより先に、価格交渉をまとめてしまって両手を受けてしまいたいという気持ちが業者に働く)。但し、このようにうまく交渉を進めるためには、「今の買主候補を逃すと両手を受け取ることができなくなる」と仲介会社が考えている必要がある。
【デメリット】
・通常、物件売却活動に入る前に、仲介会社は売主と媒介契約を締結していることから、仲介会社は買主よりも売主との結びつきが強い。従って、買主の希望よりも売主の希望を優先することが多く、このような関係性や取引知識に乏しい買主は、仲介会社に丸め込まれることが多い。
(5) 建物調査会社(ホームインスペクター)
仲介会社による依頼で建物調査をする場合と買主の依頼で建物調査をする場合がある。建物がマンションでも戸建でも対応は可能。物件の瑕疵については中立的な立場。マンションの場合は、建築確認や中間検査、完了検査などの建築主事等によるチェックの機会が比較的多く、建築物に対する品質の信頼性が戸建などと比較すると高いとされているし、中古マンションのホームインスペクションの調査範囲は、主に図面と目視ができる範囲に限定されることから、費用に見合った調査になるかについては、留意が必要。ちなみに、オフィスビルやマンションなどの建物調査報告書(エンジニアリングレポート)の作成を本業で依頼することが多いため、投資用として個人で初めて購入したマンションでも数万円を支出して建物インスペクションを依頼したことが過去にあった。しかし、私が想像していた以上に個人向けの建物調査報告書の内容はあっさりしていたことから、以降の投資物件の購入時にはホームインスペクションは依頼していない。
(6)司法書士
自ら司法書士を探してこようとしないと、銀行や仲介会社の紹介で司法書士を選定することになるが、このような「お抱え」司法書士の報酬は、平均的な水準よりもやや高めであることが多い。司法書士試験は難関国家資格の一つであるため、専門家としては信頼ができるので、疑問に思ったことは質問しても良いが、逆に、依頼者が質問しないと淡々と仕事を終わらせようとする傾向がある。
(7)銀行
ローンの貸出(借入人からの申込)を増やす目的で、どの銀行も最近は金利を抑える傾向が強い。金利で儲けることができないので、代わりに、融資手数料を設定してそこで設けるビジネスモデルに転換している銀行が多くなっている。


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