不動産投資においては、一般に築古戸建を投資対象とするような高利回り投資が好まれる。確かに、このような利回りが高い物件を対象とする方が、成長スピードが速いことから、多くの個人投資家から支持は厚い。しかし、そのリスクについて、十分な検討がされているのだろうか。
お金の勉強をしたことがある人は、「複利効果」という言葉を聞いたことがあると思う。元本から発生した利息に対しても、さらに利息が生まれることをいい、このような複利効果が見込める投資においては、投資期間が長ければながいほど、資産の増加額が大きくなることが分かっている。また、その利回りが大きければ大きいほど、複利効果による増加のスピードは速くなる。
例えば、都心区分マンションを賃貸して得られる投資利回りが3%だと仮定し、一方、郊外もしくは地方の戸建を賃貸して得られる投資利回りを8%であると仮定する。得られた利益を同じ投資対象に20年間投資する場合、その資産がどれぐらい増えるのかを比較すると、いかのようになる。

利回り3%の都心区分マンション賃貸投資の場合は、資産の額がわずか約1.75倍にしかならないのに対して、利回り8%の郊外戸建賃貸投資の場合は、資産の額が約4.32倍にもなる。このような効果の違いもあるのであろうが、郊外(もしくは地方)の戸建て賃貸を激推しする個人投資家がいるし、むしろ最近は、そのような投資スタイルの方が主流だと思う。もちろん、巷で流行っているFIREを早期に達成するためには、利回りが高い方が良いだろう。しかし、このような資産の表面的な増加スピードだけを見て、不動産投資をして良いのであろうか。
筆者はそうは思わない。
リスクには、「顕在」しているものと「潜在」しているものに大別できる。そして、不動産という投資対象は、潜在しているリスクが少なくない。しかし一方で、不動産投資は、その潜在リスクが顕在化するタイミングを正確に把握することが難しいという特徴がある。不動産に関わるリスクには、不動産ニーズが急に変化するリスクであったり、金利が急に上昇するリスクであったり、設備が故障して物件が使用もしくは賃貸できなくなるリスクであったり、物件が災害に見舞われるリスクなどがある。
今は、市況が好調でこの世の春を謳歌している利回り高い物件の大家さんも、数年後や数十年後には、たいへんなことになるかもしれない。短い幸せを実現したいのであれば、どういう投資スタイルで投資をするのかはあまり関係ないかも知れないが、20年後も資産を減らさず確実に資産を構築したいのであれば、あまり高い利回りの投資対象を好んで選ぶのは、危険だとも言える。
高い利回りの投資対象を選択しているということは、それだけ将来の価格のボラティリティが高く、利回りが低い投資対象と比較して、将来、大きく値下がりするリスクが高いということを意味している。つまり、高い利回りの投資商品に投資をしている人は、「背伸びをしてつま先立ちの状態で投資をしている」、もしくは、「100m走のスピードでマラソンを駆け抜けようとしている」ように筆者には見える。
繰り返すが、一般的に都心と比較すると地方の物件の利回りは高いので、不動産投資という観点では、都心物件に投資するよりも郊外もしくは地方の方が早く資産を増やすことができる。もし2~3年後に亡くなることが分かっているのであれば、それでも問題ないが、20年後を目指して投資を考えるのであれば、その危険にも十分に留意して投資に当たってもらいたいというのが筆者の意見だ。

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