マンションの管理組合の管理方式を「理事会方式」から「管理者方式」に変更するかについて、議論される管理組合が多くなっている。筆者は、「理事会方式」を維持するべきだという立場であるが、その理由を解説する。
管理方式を「管理者方式」に変更することで、マンションのオーナーである区分所有者が、自らの望むマンション管理を実現できなくなる恐れがある。筆者の考える主な懸念点を以下に5つ挙げる。
1. 管理コストのコントロール及び業務レスポンス迅速性への懸念
管理方式を「管理者方式」に変更すると、区分所有者の承諾を得ずに、管理会社が自ら裁量や判断で実施ができる行為が増える。人間は、誰でも楽や得をしたいものであり、人間の集まりである管理会社も基本的に同じだ。例えば、「今は忙しいから、このマンションからのリクエストや改善要望対応は後まわしにしよう」という気持ちや「(他に探せばもっと良い業者があるかもしれないけれど)多少コストが掛かっても、いつも気楽に請けてくれるこの業者に工事をお願いしよう」という気持ちが、マンションを管理する人や管理会社に湧き起こっても何ら不思議ではない。管理方式を変更することでこの傾向が顕著になり、管理費が増えたり、修繕積立金が増えたりする恐れがある。
2. 区分所有者の管理手間が目論見通りに減らない可能性
上記のような「人」の自然な気持ちをコントロールするためには、本来、マンションの区分所有者による適切な監督が必要になるが、理事会方式でも難しいのに、管理者方式でその監督を行き届かせることは容易ではない。これを実現させようとすると、区分所有者の負担(手間)は期待したほど小さくはならない。
3. 管理方式の再変更の困難性
「管理者方式」をひとたび採用すると、「理事会方式」に戻すことが困難な点にも留意が必要だ。万が一、「管理者方式」の管理に不満足で、管理方式を「理事会方式」に戻そうとしても、管理規約の改定が通常、特別決議(議決権の4分の3以上の賛成)が必要であり、理事の成り手不足が深刻化している管理組合において、「理事会方式」への復帰決議を取り付けるのは難しい。この場合、「管理者方式」によってコスト高になった管理コスト(管理費)を見直したいが、望まない管理方式(「管理者方式」)が継続してしまうことになる。この状態が続くと、大切な資産の価値が徐々に低下することになり、気が付いたら、自身の大切な自宅や投資物件の価値が大きく毀損していたということにもなりかねない。
4. アンケートの形骸化
区分所有者とのコミュニケーションツールとしてアンケートはますます重要になっくるが、仮に今後、頻度を上げて各種アンケートを実施するとしても、その分析や採否は、基本的に管理会社に任されることになることから、区分所有者の意見が適切に反映されなかったり、望む方向と異なる管理がなされたりする恐れがある。
5. 利益相反防止対策の未整備
管理者方式は、利益相反が生じやすい管理方式である。従って、本来は、利益相反取引(例:管理会社が自らマンションから工事を受注するような取引)の防止対策を適切に講じる必要がある。具体的には、「利益相反取引の禁止」や「一定金額以上の支出は必ず相見積もりを取って区分所有者に全て報告をする」などのルールの設定を管理方式変更と一緒に議論すべきだ。しかし、管理方式の変更と一緒にこのようなルール設定の検討がされてる事例を筆者は知らない。
以上5点を踏まえると、管理方式を「理事会方式」から「管理者方式」に変更することは、区分所有者に不利だと筆者は考える。

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